夕方の六時を過ぎても

 夕方の六時を過ぎてもその洗濯物は乾いていなかった。このままでは最悪の状態になっていく気がした。そう思う俺に追い討ちをかける出来事があった。警部からの電話だった。

 今夜は木下警部からの食事のお誘いに付き合わなくてはならない。本音を言うと、行きたくない。食事など食べなくても良い。なぜなら彼が食べるものはゲタモノだ。普通の人が食べない物を食べ、それを見せ付けるような気がして成らない。

 だが、警部と食事を共にしないと今後の仕事に支障が出る可能性がある。警察だからそんな個人の感情が有っては成らないのだが、警官とはいえ中身は人間である、仲良くやっていた方が得策である。呼ばれて行った店はいつもの『食楽園』という名前の店である。

 広島市の中心部に新天地公園と呼ばれる公園があって、その公園の南側に食楽園はあった。広島でゲテモノを食べさせてくれる店はたぶんここだけだろう、少なくとも俺の記憶には他にはない。店内に入ると警部は左手に見えるカウンターの席に座っていた。

 その隣には山下という名前の新聞記者が居た。彼も俺と同じような待遇で、警部からのお誘いを断れないでいる人物だ。その山下と俺とで警部を真ん中に挟む形になるように、警部の右側に座った。俺は目上の人の右側に座るのは好きでは無いのだが、この場合、既に左側に山下が座っているのでしょうがなかった。警部はヤモリ入りに続く。

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