警部はヤモリ入り

警部はヤモリ入りの焼酎を飲んでいた。警部の好きな飲み物で、この店に来ると何時も必ず最初にそれを注文して飲んでいた。山下の前にも同じ様にヤモリ入りの焼酎が置いてあったが、それに山下が手をつけた形跡は見付からなかった。

 そのグラスの横には枝豆と何かの酒の肴が置いてあった。が、その肴が何であるかは、俺の知識の中では判断できなかった。山下は可愛そうにこの店で食べる物は無い。いつも彼の目の前には何か置いてあるが、それが無くなっていた事はない。

 そんな事があるので彼はこの店に来ると必ず無口になる。突き出しに出た枝豆を肴に、隠すようにして持っていたビールを少しずつ飲んでいた。この俺がこの店で食べる事が出来るのは馬刺しだけである。他の物は見るだけで胸がむかついてくるのだが、何とか馬刺しだけは胃袋に収める事が出来る、山下よりはましだろう。

「俺はビールを頼みます。あと馬刺しをお願いします」カウンターの中に居た店員に向かってそう注文すると、警部が持っていたヤモリ入りの焼酎を俺に見せ、話しを始めた。

「ヤモリはいいよ、この匂いが堪らなくて。この干乾びた香りがいいのよ、俺は現場に行くと誰かが殺された後だろ、いつも生々しい匂いがするのよ。それか、もう腐った匂いのどちらかだ。ところがこのヤモリは、死んでいるが、その匂いがしない。分かるか大友」「いえ、俺には分かりません」俺がそう答えると警部はに続く。

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