朝の九時を少し廻った頃

――『勘違い』――

 朝の九時を少し廻った頃、児玉ゆかりさんが住んでいるアパートの前に立っていた。俺が何か見落とした事は無いか、それを考えていた。こんな調査は何回足を運ぶかで違うものだろう。そう考えてもいた。

 何しろこんな調査をする事その物が初めての体験だ、慎重に事を進める以外手が無かった。一階の駐車場は前日と同じ状態で軽自動車が一台置かれている、ほこりは被ったままの状態だ。その風景を見ていると、まるでこの建物には誰も住んでいない様にも感じられた。

 西側の階段を使い二階に上がり、身体の向きを変えると最初の部屋の『野田』と書かれた表札に目線が行った。だが何かの用事が有るわけではない。先で話を聞くことも有るかも知れないが、そのまま歩いて彼女の部屋の前に立った。

 表札には何も書かれていない。独身の女子大に通う女性だから表札に何も書いていないのが正解だ。真面目に書いてあると、その苗字から色々と調べる事ができる。独身の一人住まいをする若い女性が、自分の身を守る為には表札には名前を書かない方が無難だ。すると、苗字を書いてある隣の部屋には男性が住んでいる事になる。念の為にもう一度に続く。

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